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島岡達三作品コレクション

解説 中澤コレクション (東工大博物館陶磁器目録より)

 本学収蔵の島岡作品の多くは、平成12年11月6日に中澤三知彦氏(窯業学科昭和16年卒)より寄贈いただいたものです。
中澤氏は島岡達三の同級生で、島岡達三の作陶活動を支えた人物のうちの一人です。
自らも絵筆や陶芸に親しまれると共に発明の才に富まれ、耐火物を中心とする研究に多くの成果を挙げてこられた技術者であり、会社経営にも大橋化学工業株式会社代表取締役社長他幾つもたずさわってこられました。

「中澤コレクション」について


道家 達將(東京工業大学名誉教授、百年記念館特命教授)

 平成12年(2000年)、東京工業大学は人間国宝島岡達三さんの110点に及ぶ力作の寄贈を受けました。寄贈して下さったのは、本学窯業学科での島岡さんの同級生で、戦前、芝の島岡宅に行き来されて以来の親友中澤三知彦さんです。この110点は、中澤さんにとって、実に大切な品でした。翌年6月、この作品群を百年記念館で「島岡達三陶芸作品特別展」として公開展示したときの目録に、中澤さんはこんな一文を寄せて下さいました。
 「昭和29年3月学友島岡達三君の初窯に招かれて以来、時には窯出しに、或いは百貨店などの個展で求めた作品がいつとはなしにかなりたまり、昨秋大学ヘ寄付させて頂きました。島岡君の陶芸とふれ合ったことから、書物、見学、若干の作陶を通して陶芸の美、歴史を学ぶようになり、自己なりに楽しんできました。私の人生の経糸を技術者・経営者とするならば、緯糸の一つは陶芸の中に遊ぶことだったと思っております。」(平成13年5月23 日) 。
 内藤喜之学長(百年記念館長)は心から感謝の意を表されました。当時中澤さん84才、島岡さん81才、たいへんお元気でした。しかし、その後、中澤さんが倒れられ、平成19年末島岡さんが急逝されました。中澤さんは、病床から弔辞の中で次のようなことを書かれました。

 「はじめて益子のまちに足を入れたのは昭和29年3月のはじめである。・・・初窯にて、その成功を祝ったのではあるが、今振り返ると昨日の様な気すらする。昭和40年代の後半から将来は人間国宝になるのではないかと思って、東京の百貨店、関西の百貨店などでの出品作品を少しずつ買い求めて来ていた。・・・私は島岡の作品を140点ほど所持していたが、選定して110点を私の出身校(島岡君の出身校でもある)に寄贈して、島岡君の友人としての祝いとしたのである。私の島岡君との交わりは、陶を通しての交わりが中心であったが、昨年10月はじめ、私の病の見舞いに私宅まで来ていただいたのが最後の友人としての会合であった。その折は、君は年老いて88才、私は91 才であり、最後の面会であった。まさか島岡君、君が先に死の世界に先立つとは思わなかった。惜しい人をなくしたとつくづく思う。・・・ (以下略)」

 なお、中澤さんは、平成16年(2004年)に、後輩である瀬戸の加藤釥さんの美しい作品7点も本学に寄贈して下さいました。東工大時代の加藤さんが野球部の名ショートだったことや、窯場を訪れたこと、酒をくみ交わしたりゴルフをしたことなどを述べた後、「(東工大所蔵の)釥さんの作品として大形の非具象の良いものにつけ加えて、小品ながら(この)佳作品数点にて賑やかになって頂ければ幸いと思う」と記した一文を頂きました。
 中澤さんは、すぐれた画家であった両親のもとで育たれ、自らも絵筆や陶芸に親しまれると共に発明の才に富まれ、耐火物を中心とする研究に多くの成果を挙げてこられた技術者であり、会社経営にも大橋化学工業株式会社代表取締役社長他幾つもたずさわってこられた方です。中澤コレクションは今後、見て下さる多くの方々に、大きな力を与えてくれることでしょう。

2009年2月



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